フレディ・M・ムーラー特集 マウンテン・トリロジー《「山」三部作》

過去の上映作品
[上映日程]8/8~21(休映:8/13、17)

“ 山、人、魂の交感── ”

映画史に燦然と輝く “山” 映画の最高峰、『山の焚火』。
スイスの巨匠フレディ・M・ムーラーの伝説の傑作が、35年の歳月を経てスクリーンに甦る!『我ら山人たち』『緑の山』を合わせて一挙公開!

[解説]
ダニエル・シュミットやアラン・タネールらと並び、1960年代後半に起こったスイス映画の新しい潮流“ヌーヴォー・シネマ・スイス”の旗手として知られる、フレディ・M・ムーラー。代表作である『山の焚火』は、1985年に発表され、ロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)を獲得し、世界にムーラーの名を轟かせた。本作はスイス国内では25万人を動員し、スイス映画アカデミーよりスイス映画史上最高の一作に選定され、大きな話題を呼んだ。本特集では、『山の焚火』と合わせて「マウンテン・トリロジー」を構成する2本のドキュメンタリー映画『我ら山人たち─我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない』(1974年)と『緑の山』(1990年)を同時上映。ムーラーが生まれ育ったスイス・ウーリ州の山岳地帯を舞台に、人と自然、そしてまるで現代を予知したかのような今日的問題を、描き出す。

フレディ・M・ムーラー特集
マウンテン・トリロジー《「山」三部作》

①『山の焚火』
[1985年/スイス/スイス・ドイツ語/カラー/117分]
監督・脚本:フレディ・M・ムーラー
撮影:ピオ・コラーディ
録音:フロリアン・アイデンベンツ
編集:ヘレーナ・ゲルバー
出演:トーマス・ノック、ヨハンナ・リーア、ロルフ・イリック、ドロテア・モリッツ、イェルク・オーダーマット、ティッリ・ブライデンバッハ

雄大な自然に囲まれた美しく神話的な世界で、
その中に潜む人間のリアリティが、画面から溢れ出す。

あらすじ | 広大なアルプスの山腹。人々から隔絶された地で、ほぼ自給自足の生活を送る4人家族。10代半ばの聾啞の弟は、その不自由さゆえに時に苛立つこともあるが、姉と両親の愛情を一身に受け健やかに育つ。ある日、草刈り機が故障したことに腹を立てた弟は、それを投げ捨て父の怒りを買う。家を飛び出し山小屋に隠れ、一人で生活をする弟。そこに食料などを届ける姉。二人は山頂で焚火を囲み楽しい時間を過ごすが、やがて姉の妊娠が発覚し…。


②『我ら山人たち─我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない』
[1974年/スイス/スイス・ドイツ語/カラー/108分]
監督:フレディ・M・ムーラー
原案:フレディ・M・ムーラー、ジャン=ピエール・オビー、ゲオルク・コーラー
撮影:イワン・シューマッハー
編集:フレディ・M・ムーラー、エヴェリーネ・ブロムバッハー
録音:リュック・イェルサン

ムーラーの故郷、スイスのウーリー州。
山岳地帯に住む山人たちの生き方と精神世界に迫る。

解説 | 映画は地域によって三つのパートに分かれている。長いトンネルを抜けた先にある第一部の舞台はゲシェネンの渓谷。トンネル建設によって自然環境のバランスが崩れ、長年営まれてきた牧畜経営の破綻する運命が示される。第二部の舞台シェーヒェンの渓谷では、伝統的な高原の牧畜経営が維持され、直接民主制によって多くの政治的選択が行われている。第三部の舞台マデラーナー渓谷のブリステンでは、牧畜経営だけでは共同体の運営が難しいため、住民の半数はよそへ働きに出ている。1973年から1975年にかけて丁寧に撮影された本作には、対象となる地域だけでなく、民俗学的なテーマや、共同体の閉鎖性など『山の焚火』に直接的に繫がる多くの要素が詰まっている。


③『緑の山』
[1990年/スイス/スイス・ドイツ語/カラー/128分]
監督・原案:フレディ・M・ムーラー
撮影:ピオ・コラーディ
編集:カトリン・プリュス
録音:フロリアン・アイデンベンツ

アルプスでの放射性廃棄物処理場の建設計画。
反対派と賛成派に分かれた住民たちを追う。

解説 | 1988年、NAGRA(ナーグラ:国立放射性廃棄物管理協同組合)はニトヴァルデン準州ヴェレンベルクに原子力発電に使われた核の最終廃棄物処理場を建設する計画を発表し、地域住民の抗議団体が形成される。支持者と反対派にインタビューする。リサーチと議論は、直接影響を被る人々、ヴェレンベルクで数世代にわたって暮らしてきた家族に焦点を当てる。彼らは、放射線の危険性を目前にし、今や自身のルーツと生活の地を奪われることに直面している。さらに本作は、政治家、地質学者、医学者など様々な立場の人々の話から、一過的で限定された地域の問題にとどまらず、時間の尺度としては人間の寿命をはるかに超えたスケールの問題を提起する。ムーラーはこの作品を「子どもたちと子どもたちの子どもたち」に捧げており、次世代に対して責務を負うべき大人たちに、今日にも通じる問いを突きつける。


配給:ノーム

◎公式サイト:gnome15.com/mountain

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