向こうの家

今後の上映作品
[上映日程]11/10~11/15

“ 瞳子さん、父さんと別れてください。”

その人は、僕の知らない、もう一つの家にいた。

【解説】
東京藝術大学大学院で黒沢清や諏訪敦彦に師事し、これが長編デビュー作となる新鋭・西川達郎が、逗子の町を舞台に、主人公の少年が家庭の崩壊劇を経験するひと夏を描き、ええじゃないかとよはし映画祭2019グランプリをはじめ、うえだ城下町映画祭第16回自主制作映画コンテスト実行委員会特別賞など、国内の数々の映画賞で受賞やノミネートを果たした青春ドラマ。主人公・萩役は『ソロモンの偽証』『5億円のじんせい』などで注目される望月歩。

【あらすじ】
自分の家庭は幸せだ、と思っていた高校二年生の森田萩。しかし父親の芳郎にはもう一つの家があった。「萩に手伝ってもらわなきゃいけないことがある」芳郎の頼みで、萩は父親が不倫相手の向井瞳子と別れるのを手伝うことに。自分の家と瞳子さんの家、二つの家を行き来するようになった萩は段々と大人の事情に気づいていく……。

【レビュー】
夏のある日、男子高校生が訪れた坂の上の一軒家には、妖艶な美女が囲われていた…というあまりにも危険な匂いのする設定から映画は始まる。しかし、これは決して単純な“ひと夏の経験もの”ではない。奇妙な学友たち、どこかネジの外れた家族、見るからに胡散臭い釣り人…といった人々の登場によって、物語はじわりと常軌を逸していく。西川のストーリーテリングは実にしたたかと言っていいだろう。
黒沢清(映画監督)

ここではむしろ、見せかけの世界、演じられる家族、非現実的な演技というも のが積極的に取り入れられて、喜劇的な呑気さとともに小さな世界が形作られ てゆく。しかし、「よく話すことで、互いをよく理解できる」という母親の価値 観に牛耳られている家族世界とパラレルに、父親によってもうひとつの家が作 り出されていることが発覚する。世界から遊離したような高台にへばりつく「変な家」に暮らす女の暮らしは、長男ハギの見せかけの世界を決定的に崩壊させ るのだが、地に足のついた女の暮らしが、逆に彼の世界を再生してゆく。登場 人物ひとりひとりの世界は実は断絶しており、みながバラバラの世界を生きて いるのであるが、映画は誰かを告発することも、否定することも、利用するこ ともなく、救いのない世界を深刻に嘆くわけでもなく、彼ら全ての人に生起す る感情を肯定しようとする。やがて女とともに向こうの家も消え去り、ハギの 唯一の世界との繋がりも失われるのだろうか。いや、それでも海は輝いている。 この薄っぺらな世界を生きる術はまだある、という強い意志がこの喜劇を輝か せている。
諏訪 敦彦(映画監督)

家族・友達・恋人って10代の頃の三大日常を見事に切り取っている。 80年代を思い出させる、どこか懐かしく、どこか痛い思春期の物語。
内田 英治(映画監督)

ホント、この手は苦手なはずなのに、最後までニヤニヤ見ちゃった。普遍的で、絵作りも落ち着いてるけど、ちょっと破城してるホームドラマ。お話が、建前じゃないのがよかった。瞳子(トウコ)さん、気になる。
カンパニー松尾(AV監督・映画監督)

20代にしてこの映画をしっかりと撮った西川達郎監督の眼差しは「家族」とは何か?を静かに問い続ける。また、家族とは別の関係性を望月歩と大谷麻衣が見事に演じている。若き才能たちによる今観るべき傑作である。
森谷雄(プロデューサー・映画監督)

思い返せば、あのときがあの人に会えた最後だった。顔を思い出そうとすると滲んでしまう。それがたとえ叶わなくても、二度と会えないあの人の姿を残すために映画はあると『向こうの家』は教えてくれる。
杉田 協士(映画監督)

不登校に父親の不倫発覚、愛人に立ち退きを迫る任務など、穏やかでないはずの毎日が、高校生萩くんの類まれなるのんびり力で、ことは進まず優しい時間が広がる。高台の家に、海辺の散歩、一日サボって好きに歩いたような爽快さを作品から感じた。
衿沢 世衣子(漫画家)

瞳子の家は丘の上にある。そこには気ままな暮らしがあり、悠々な時の流れもある。天界のごとき丘の上からは下界の街や海を見下ろせるが、険しい石段を登らないと瞳子には会えない。つまり、なかなか手の届かない存在のようなのだ。少年は父親の不倫相手である瞳子に絆され、信頼し、やがてふたりは疑似家族のような奇妙な関係を育んでゆく。寛容さは優しさを生み、現代社会の渇きを潤すのだ。
松崎 健夫(映画評論家)

理想と現実のギャップに慄いても、それを咀嚼したり納得させて貰えるだけの時間は中々与えて貰えない。割り切るか、受け流すことでしかやり過ごせない。だけど、誰もがそんなに器用じゃない。時間をかけないと乗り越えられないことが、世間はそれを良しとしないけど、人生のズル休みや寄り道をしないと気が付けないこともある。そんな不器用で面倒で愛おしい人達の心の機微に胸打たれた。
ミヤザキタケル(映画アドバイザー)

『向こうの家』
[2018年/日本/カラー/82分]
監督・原案:西川達郎
出演:望月歩、大谷麻衣、生津徹、南久松真奈、円井わん、植田まひる、小日向星一、竹本みき、でんでん
プロデューサー:関口海音
脚本:川原杏奈
撮影:袮津尚輝
照明:小海祈
美術:古屋ひな子
サウンドデザイン:三好悠介
編集:王晶晶
音楽:大橋征人
製作:東京藝術大学大学院映像研究科

◎公式サイト:mukonoie.com

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