[STORY]
中心となるのは1993年、キャピトル・レコードでの未発表ジャズ録音(※2020年にフランスの映画配給会社、La Rabbiaが権利を獲得してレコードを発売した)。Dr.ジョン、マリアンヌ・フェイスフル、リッキー・リー・ジョーンズと歌い交わす姿には、スクリーン上の強面とは異なる柔らかさが滲む。ウェーバーはこの映像を30年越しに編集し、4:3の白黒フレームに閉じ込めた。写真家としての原点と美学が、ミッチャムの存在感と同じ呼吸で並ぶ。証言者も豪華にして多彩。『デッドマン』(95)で共演したジョニー・デップは紳士としての印象を語り、ベニチオ・デル・トロは「部屋の空気を変える人」と評する。リーアム・ニーソン、クリント・イーストウッド、孫娘キャリーもその多面性に触れる。妻ドロシーとは57年連れ添い、1997年に79歳で亡くなるまで離れなかった。ウェーバーは3年かけて出演を説得したという。ミッチャムは、ただ立つだけで物語になる。本作はその美しさに身を浸すための、静かな夜のジャズのようなオマージュである。
Text by 森直人(映画評論家)