映劇レポート:『いつくしみふかき』舞台挨拶

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新型コロナウィルスだけでなく嵐のような雷雨が上田を襲った822日。長野県飯田市で撮影され、上田で教鞭を取られていた小林英樹さんがご出演されている映画『いつくしみふかき』が上映初日を迎えました。座席の制限やマスク着用の徹底、サイン会ではなくサイン入りパンフレットの販売に切り替えるなど感染症対策を講じながら初日舞台挨拶を行いました。(※本文では小林さんの遠山さんの呼び方が雄くんもしくは役名の進一くんと時々で異なっていますが、舞台挨拶の雰囲気をより丁寧にお伝えするためそのまま書き起こしました)

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遠山雄さん(以下敬称略):映画の企画と主演をしました遠山雄と申します。すごいですね。こんなにいっぱいいると思ってなかったのでありがたい。

小林英樹さん(以下敬称略):何役ですか、主演。

遠山:進一か。

小林:進一くん。

遠山:名前忘れちゃいますよね(笑)進一です。

小林:私は進一くんの叔父さんをやりました。義孝叔父さん。なかなか嫌な奴だったと思います。長野県飯田市出身の小林英樹と言います。今日はありがとうございます。

遠山:何を話そう

小林:まず進一くん、夏休みに虫を採りに行った少年みたいな格好は

遠山:僕は今ですね、旅をしています。日本全国、舞台挨拶をさせてくれる映画館は貴重なんですよ。映劇さんみたいに。今30(箇所)くらいで。東京に帰らずですね、車中泊をして山口県から来ました。上田は、歴史が大好きなので真田家ですよね?僕が今日泊まった上田山荘っていうホテルさんに、真田家のお城の見取り図みたいなのがねあってね、すげーいいとこ泊まったなって。

小林:そういうの好きなんですか?

遠山:はい、で、今日上田城行って来ようかなと思ったら大雨にやられて

小林:本当に。最悪な雨の中ありがとうございます。

遠山:小林さんは、なんでこんなに上田大好きななんかSNS見てたら、こばちゃんよく上田に居るなあと思ったんですけど。

小林:よく居るなって(笑)僕、飯田市出身なんですけど、(上田を)第二の故郷なんて勝手に呼んでます。昔、働いてたんです上田市で。平成16年から(平成)20年。

遠山:先生でってことですね。

小林:そう。でも悪いことしたから首になっちゃったんだけどね。

遠山:あそうなんだ。

小林:そうなんです。っていうと信じるから(笑)それでもお世話になった方とか、尊敬する先生とか保護者の方とか教え子さんもこの中(会場)には居ると思うんですけど。ありがたいですね。

遠山:ありがたいですね。だもんで、あ、だもんでって、あのこばちゃんと居ると飯田弁になっちゃうんですよ。

小林:(笑)

遠山:いや嬉しいです、本当に。上田映劇さんはですね、本当にこの僕らみたいなインディーズの映画を撮る集団に人気のある映画館で、上田映劇さんでの上映が決まったらですね、何人も知り合いの監督さんから「えー上田映劇でやるの?いいなー。うち、決まってないんだよ……」って電話かかってきたりとか。

小林:インディーズと商業の映画の違いとかわからないお客様もいると思うから、進一くんからちょっと

遠山:簡単に言うと商業の映画っていうのは、たくさん有名な方が出てて、大きな予算で作る映画で大体そうですね。東映とか東宝、松竹とか、皆さん知ってるであろう映画会社が配給とかについてる映画を言いますけど、この映画はそうじゃなくてですね。僕が企画しました。

小林:何年前ですか?

遠山:6年前の企画です。映画俳優で売れたかったんです。もう19から俳優やってて、36です。映画俳優になりたいのに劇団とかやってて、周りの仲間、俳優たちがインディーズの映画で結構活躍してるのを見てたんです、指を咥えて。「なんだ、インディーズの映画ってそんな面白くねぇだろ」って思ってたんですけど、観たらまあ、面白いの多くて。これは俺もやらんとなあと思って、地元の飯田を巻き込んで6年がかりで作った映画です。

小林:進一くん役の遠山雄なんですけど、スクリーンの中は痩せてるのにお腹とか出ちゃって、本当に大変。

遠山:日本全国の美味しいもの食べて……

小林:本当に主演? なんて言われてね。

遠山:このコロナ禍の状況でも命がけで作った映画なので、1人でも多くの方に見ていただきたい。ただ家で指を咥えてね、大丈夫かなって待ってるわけにはいかないので、本当に地方でも出来る限りの、とは言っても迷惑のかからない動きで。でもやっぱり行くと行かないとでは、お客さん違うんですよ。1人だけの時もありますし、

小林:行かないと一生知らない映画ですしね。

遠山:だから、映画館の前でチラシを配らせていただいたり、映画館の近くの店に大丈夫かどうか確認をして、行って、この映画の話をさせていただいたり。そうすると結構来てくれるんですね。

小林:いっけいさんも飯田ではチラシ配りしてくれましたよね。

遠山:いっけいさんも飯田とか豊川で、

小林:飯田の人たちびっくりしちゃってね。「うわ!いっけいさんだ!」って

遠山:俺がやってもなんともないけどいっけいさんが来ると二度見三度見ですよ。

遠山:この映画は3年前に撮り終えましたね。

小林:そこまでに行く道のり……僕が関わる前からの企画なので、雄くんがどんなことを飯田でやったのかのお話をぜひ。

遠山:お金がないので、必死こいてとにかく人に頼って大きな組織を作って、お金をかかるところを人にいろいろ無償でいただいてですね、住む場所だったり食事……飯田の食材提供していただいてもらって、

小林:毛布借りて

遠山:毛布とか。トイレットペーパーとか、何でもいいからお米一粒でもくださいみたいな物乞いみたいなことやって作った映画ですね。内容は見ていただいて、いろんな捉え方が皆さんにあると思いますが、実話をベースに作りました。何でここまでハードな映画にしたんですかって方もたくさんいらっしゃると思いますが、僕はあえてやりました。
もちろん、監督の作品なんですけど、例えば暴力シーンなんかも、昨今はコンプライアンスなんかが本当に厳しくて……、なかなかああやって血を出したすることはできませんが、これは本当は悪いことを美化するつもりはないんです。純粋にここまで殴ったら痛いですねよね。絶対にやってはいけないことなのでありのまま描くことに拘ったのと、この映画は本当に僕が演じた進一といっけいさんが演じた広志の後悔の映画だと思ってます。
もしかしたら、あの親子は本当に1つのボタンのかけ違いでああいう風になっただけで、もしかしたら一緒にお風呂に入ってるような親子になったかもしれないなって。これがちょっとしたね、希望なんですけど。世の中、良いことばかりではなくて、僕がこの映画作りで本当にいろいろ後悔することもたくさんあったんですけど……
今、そんな時代に突入しそうな時に少しでも希望を持って、皆さん後悔の無いように生きてほしいなって。人間関係がこれからどんどん試される、そんな時代になっていくと思います。僕自分自身もあんま家族と上手くいってないので、……本当なんすよ。

小林:笑いが起きてる。うまくいってないように見えないのかな?この体型が

遠山:この体型は家族ではなくて近所の優しい、ご当地で出会った人たちにいただいた愛情でここまで育ちました。あとはね、小林さんが演じた義孝さんだって、1回目観たら「この野郎、なんだこいつは」って思うかもしれませんが、その裏を考えながら観ていただけると、ちょっと可愛らしいところもあります。「どんだけお姉ちゃん好きなんだよ、こいつ」とかね。

小林:初めて観た方のTwitterでのご感想が「クズ義孝おじさん。でも23回観たら義孝叔父さんの気持ちがわかった」っていう感想が。

遠山:本当ですか。

小林:大概クズって書いてあります。追い出した張本人ですから。皆さん23度観ていただければ、まだ映劇さんでやるので。

遠山:こばちゃん、折角だからエンドロールの話とか。

小林:エンドロールがすごい長かったと思います。タテタカコさん、飯田市のアーティストです。長野県だと長野県のCMソングで使われていたりだとか、声は聞き覚えあるかと思いますが、東京のお客さんもこのエンドロールに圧倒されたってご感想もいっぱいいただいております。飯田市のエキストラ、または雄くんが言ったようにいろんな毛布とか貸してくれたり、車も提供してくれたり、そういう人達の名前、あと企業、ほぼ100%載っております。

遠山:ミスがあるかもしれませんが、もしあったら責任を持って追加します。

小林:飯田では214日からずっとやっていただいて、で、後半に飯田ガールズ、遠山かあちゃんズ、南信州のおいしいごはん部という3つのチームが上がっていたと思うんですけど、お母さんたちがね、ロケ弁当を毎日作ってくれたんですよね。ご自宅で取れたお米とか野菜とかを持ち寄ってくれて、それが我々、東京で映像の現場だと880円するロケ弁当が、計算すると飯田では1食18円ですみました。本当に飯田の方に、南信州の方に支えられました。で、最後の言葉を進一くんから。

遠山:あの、一番最後にですね。「伊藤茂雄さん、こいけけいこさんと共に」という言葉を添えました。初めて観る方とか飯田に関係がない人はなんだこれはと思うと思うんですけども……。映画作りの中で映画自体が後悔が残る映画だって表現しましたけど、僕自身大変後悔があるのではすね、6年もかけると、僕の映画に力を貸してくださった方で、この世にいない方が何人もいます。例えばエキストラで、お弁当を作ってくれたおばあちゃんとか、毛布をくれたおじいちゃんとか、冬を越すと連絡が来て「あの人憶えとる?」「よく遊びに来とったよね、僕らの支度部屋に」「もうおらんのだよ」とかね。そのたびに胸を締め付けられる思いでおります。
伊藤茂雄さんという方は飯田市の、僕の映画の恩人です。この映画が完成した日に亡くなったので、観ていただくことができませんでした。なので伊藤さんの想いを載せてあそこに最後に書かせていただきました。

遠山:「こいけけいこさんは、女優さんです。僕の彼女(凛)の役で背が高いんですよ。僕身長181cmで体重95kgでプロレスラーみたいな体型してますけど、こいけさんは183cmあって……。この映画を観ると僕がそんなに大きい男とは思えないと思います。そしてこいけさん遺作です、これが。飯田市出身の女優さんなんですけど、こいけさんがこの映画に出演してくださったきっかけは、東京でオーディションをしていたら、彼女ではなく彼女の友人がオーディションに来ました。「オーディションが終わったら少しお時間ください」ということだったので、色々とお話を聞いたら彼女のプロフィールを渡されて「自分の大切な友人なんですけど、彼女の故郷で撮る映画だって聞いたので少しだけでも良いので関わらせて欲しい」とお願いされました。
僕もちょうど小林さんみたいに飯田弁を駆使できる俳優さんを探していたので、「じゃあ、こいけさんに会ってみよう」とお会いさせていただいで、本当に無理のない範囲で、セリフ1つとかで出てもらおうかなぁと思ってたんです。
それで準備してたんですけど、今度は撮影1ヶ月くらい前にその友人が飯田に来ました。4時間かけて。何かなと思ったら「時間がない」ということを話されて……、彼は本当にこの映画が撮られるかってことと、こいけさんが出れるのかってことが心配で来たんだと思います。
でも、僕には「こいけの故郷が見たくて来ました」と言いました。
僕、こいけさんの演技見たことなかったんです。けど、友人がここまで動くってこいけさんてすごく素敵な方なんだと確信をして、またこいけさんにお会いさせてもらって、本当にいろんなお話をしました。監督にも相談して、この役を引き受けていただきました。本人も治療を休んで臨んでくださったので……、小林さん、知らなかったですよね? その時は。

遠山:すごい元気だし、明るくて現場のムードメーカーでした。僕と監督しか知らなかったんですけど、撮影が終わって、だんだん弱ってくんですね。映画祭とかで賞を取ると1番に喜んでくれたのがこいけさんでした。舞台挨拶を、特に故郷での舞台挨拶を本当に楽しみにしてたんですけど、残念ながらそれは叶わなかったので、こいけさんの想いも乗せてこの映画を上映しております。僕が後悔しとるのは、本当それですね。お世話になった方、僕の映画に関わってくれた方に観ていただくことができなかったという点です。こいけさんにはパソコンで入院中に観てもらいましたけど。

小林:そういう想いを我々はね、最後に一文添えさせていただいて。

遠山:どこいってもこの話をしてます。

小林:(パンフレットを見せながら)『いつくしみふかき』の背中を押してくれた伊藤茂雄さんとの出会いや、こいけけいこさんのことや、どうやって自主制作映画を監督と進一くんが6年前に構想立てて、飯田市の俳優もたくさん参加して、僕が大好き上田で色々宣伝させてもらったりだとか、そういう活動をみんな役者がやっとるわけです。そういうインディーズ映画を作るまで、作った後も書いてあって、読み応えがあります。是非是非、ロビーで11,000円で販売しております。手に取っていただけるだけでも嬉しいです。(売り上げの)1部を大切に活動資金に充てさせていただいております。ぜひぜひ見てください。

会場には遠山さんの劇団「チキンハート」に所属し、上田在住で本作にも出演していた佐藤智宏さん(写真左)もいらっしゃっていました。「佐藤くんを探しにまた観に来てください」と小林さん。また同じく会場には小林さんの教員時代の教え子さんも多く見られ、遠山さんと小林さんに素敵な花束を渡されていました。『いつくしみふかき』は8/28()まで上田映劇にて上映予定です。ご来館の際は感染症対策として体調管理とマスクのご着用をお願いいたします。

『いつくしみふかき』(作品詳細
上映中〜8/28() 8/24()は休映
8/258/28 ▷ 18:35-20:22


この舞台挨拶は2020822日におこなわれました。
【登壇者】遠山雄さん、小林英樹さん
【執筆者&カメラマン】もぎりのやぎちゃん

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