童年往事 時の流れ

過去の上映作品
[上映日程]1/15~21(休映:1/17)

“ 今でも、たびたび思い出す──。
 年老いた祖母の、大陸へ帰る道は、幼いころ、わたしと歩いたあの道なのか。
 一緒に青ザクロをとった、あの道なのか。”

[解説]
少年の成長の年代記を、彼と家族の日常をめぐるささやかな出来事で綴る。主人公のアハは、47年広東省に生まれ、一歳のときに一家で台湾に移住した。ガキ大将的存在のアハだったが病弱な父は、アハの心に小さな影を落としていた…。ホウ・シャオシェン監督初期代表作。

 1948年に広東省から台湾に引っ越してきた阿孝とその一家の生活を綴った作品。ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督が、自身の青少年時代を家族の姿も含めて描き出したもので、彼の映画としては最も自伝的要素が強い。
 大陸から台湾に仕事で渡ってきた阿孝の父は、台北の気候が身体に合わず、家族を伴って台湾南部の町に居を構える。しかし父は、肺病が悪化して死去。一方、阿孝の祖母は大陸での生活が忘れられず、阿孝の手を引いて故郷の街に通ずると信じている道を歩いていく。その後、高校生になった阿孝は、悪ガキとして反抗期を過ごす。が、やがて母もガンで死去。想いを寄せる純粋で真面目な女友達にも刺激され、阿孝は心を入れ替えて大学進学を目指す。そんなある日、年老いた祖母が、この世を去るのだった……。
 登場人物にたくさんの死と、そして号泣が訪れるが、映画はメロドラマ的物語展開で感動させるタイプのそれとは本質的に異なる。むしろ感情の強制は避け、対象に対し距離を保ったカメラ位置、長廻し、登場人物に限らず全方位に気を配った音響設計などにより、客観的な視点から事態の推移を見守っていく態度が印象的だ。オムニバス『坊やの人形』の後、『風櫃の少年』『冬冬の夏休み』を経て、本作と次作『恋恋風塵』あたりで中期ホウ・シャオシェンの作風は一つの完成を見たと言える。
 映画監督としても知られる陳坤厚にカメラを託してきたホウは、この作品で初めて李屏賓を撮影監督に起用。繊細な光の表現が評価され、李はやがて台湾を代表するカメラマンとして国際的に活躍するようになった。
 初期監督作とは打って変わって、この時代のホウ・シャオシェンは、とりわけ主役級役者に関して、有名スターより、無名でも適材適所のキャスティングを好むようになっていた。本作で阿孝を演じた游安順も、この作品までは無名だったが、以後は今日に至るまでテレビ、映画で活躍しており、最近では魏徳聖製作・脚本の『KANO』にも小さな役で出演している。主人公が思いを寄せる女友達を演じた辛樹芬も、本作のために監督が発掘した女優。以後『悲情城市』まで、ホウ作品のミューズとして活躍した。一方、主人公の母親を演じた梅芳は本作以前から多方面で活躍してきたベテランの女優。近年は川口浩史監督の『トロッコ』で、尾野真千子とも共演している。

『童年往事 時の流れ』
[1985年/台湾/ビスタ/138分]
監督:ホウ・シャオシェン
脚本:ホウ・シャオシェン、チュウ・ティェンウェン
撮影:リー・ピンビン
出演:ユー・アンシュン、シン・シューフェン
字幕翻訳:田村志津枝

第22回台湾金馬奨 最優秀助演女優賞・最優秀脚本賞
第36回ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞

[鑑賞料金]
一般¥1,500/その他通常通り

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