作品はそれぞれが異なる形式・ジャンル・国から生まれながら、現代を生きる私たちの奥深くに直接届くような“衝動”を内包しています。空音央監督の『まっすぐな首』は、首の痛みに苦しむ女性が、夢と現実、過去と現在のあわいをさまよう姿を静かに描いた映像詩で、ロカルノ国際映画祭最優秀短編賞も受賞した話題の一作。ヨルゴス・ランティモスの『ニミック NIMIC』では、地下鉄での出会いをきっかけに、人生が少しずつ“模倣”されていく恐怖が、不条理かつ美しく展開されます。ジョナサン・グレイザーによる2作、『ザ・フォール THE FALL』と『ストラスブール 1518 STRASBOURG 1518』は、それぞれ異なる手法で観客の感覚に鋭く迫ります。『ザ・フォール THE FALL』は、フランシスコ・ゴヤの銅版画《理性の眠りは怪物を生む》に着想を得て生まれた、沈黙と仮面に覆われた不穏な世界。言葉のない映像が、観る者の内面に深く入り込みます。『ストラスブール 1518 STRASBOURG 1518』は、16世紀に実在した“踊りのペスト”を題材に、世界的ダンサーたちが織りなす身体の狂騒を、パンデミック下の孤立と重ね合わせて描き出します。そしてアリーチェ・ロルヴァケルとアーティスト JR が手がけた『都市の寓話 An Urban Allegory』は、プラトンの「洞窟の比喩」を現代の都市に重ね、ひとりの少年の“気づき”を繊細に描く意欲作です。劇中には、演出家役として映画監督レオス・カラックスの姿も。映像、音、身体、記憶──世界中の作家たちが、短いフォーマットの中に込めた「今、この時代」を切り取る強い鼓動。スクリーンで、ぜひその衝動を体感してください。
[上映作品]
『ショート・パルス 5つの鼓動』
[2019-2025/61分]
・空音央『まっすぐな首』(2025)
・ヨルゴス・ランティモス『ニミック NIMIC』(2019)
・ジョナサン・グレイザー『ザ・フォール THE FALL』(2020)『ストラスブール1518 STRASBOURG 1518』(2025)
・アリーチェ・ロルヴァケル&JR『都市の寓話 An Urban Allegory』(2024)